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テチョ空港開港でどう変わる? プノンペン航空を利用しているメーカー様へ簡単解説
はじめに
本記事は、カンボジアに倉庫がある・取引先がいる、そんな日本メーカーの皆様向け解説です。
「新空港で結局なにが変わるの?」「品質や納期は大丈夫?」
――そんな“ざっくり知りたい”と“少し不安”の間にいる方に向けて、ポイントだけを分かりやすく整理しました。
今後カンボジアの物流設計を検討される際、KTI(テチョ国際空港)を活用される際の足掛かりにしてください。


1 プノンペン空港からテチョ空港への変更点
いちばんの変化は、空港の受け入れ能力が大きくなることです。
便数や使える機材(飛行機の種類)の選択肢が増え、経由の少ないルートを取りやすくなり、結果として、到着までの時間のブレが小さくなります。
また、前提として、IATA空港コードがPNHからKTIに変更されます。予約・送り状は事前にKTIへ統一しておくのが安全です。

2 メリット
じゃあ具体的に何が良くなるんだろう――そんな質問にお答えします。 メリットは主に以下の3つです。
メリット1|積める確度が上がる(Uplift安定・ロール減)
【ポイント】
便数・機材・ハブ接続の選択肢が増え、繁忙期でも「次便送り(ロール)」になりにくい。
【背景】
広い滑走路とゲート拡張で、大型機や主要ハブ経由の運用余地が拡大。貨物機ともに受け皿が増える。
【業務インパクト】
- Uplift率(予約どおり積めた率)の向上
- 週内振替のしやすさ=出荷遅延の回復力(レジリエンス)向上
- 緊急案件の確保枠が取りやすく、特急コストの発生頻度が下がる
- Uplift率とは:予約したスペース(重量/容積)に対して、実際に搭載できた割合。
- 週内振替とは:同一週内で便・ルートを変更して当週出荷/到着を維持する運用。 例:①別便への載せ替え、②別ハブ経由への切替、③キャリア変更。
- ロール(次便送り)とは:予約どおりに積めず、貨物が次の便に回されること。繁忙期・悪天候・機材変更などで発生。
メリット2|リードタイムの安定化
【ポイント】
短期便が組みやすく、予定納期の予測精度が上がる。
【背景】
地上処理の余裕と接続便の選択肢増で、待機や遠回りが減る。結果として、在庫設計がしやすい。
【業務インパクト(指標例)】
- 計画 vs 実績の乖離縮小
- 安全在庫日数・仕掛在庫の圧縮余地が生まれる
- 地上処理の余裕とは:空港の地上ハンドリング(受託→検査→搬出入)において、処理能力(人員・設備)のバッファ。
- 計画 vs 実績の乖離縮小とは:計画した到着日/時間と実績の差が小さくなること。
- 安全在庫日数とは:欠品に備えて持つ安全在庫が平均的な需要をまかなえる日数分。
- 仕掛在庫とは:工程やサプライチェーンの流れの中にある在庫。
メリット3|品質リスク低下
【ポイント】
温度・振動・静電気(ESD)に弱い精密機器でも、取り扱い標準(SOP)と設備が整った導線を選びやすくなる。
【背景】
空港および周辺の定温・冷蔵設備、近接倉庫(定温)の活用で、温度逸脱や過搬送のリスクを抑制
【業務インパクト(指標例)】
- 温度逸脱件数・到着初期不良率・破損率の低下
- 客先クレーム/是正措置発生の減少
- 感温材(接着剤・バッテリー材料など)の歩留まり改善
- 温度逸脱とは:製品が規定温度帯(例:2–8°C、15–25°Cなど)を外れる事象。
- 導線とは:貨物がどの道を通り、その道でどんな設備を使い、どういう手順で扱うかをセットにした「決められた通り道」。

3 デメリット(留意点)
もちろん良い変化だけではありません。空港の新設には以下のようなトラブルがつきものです。
デメリット1|手荷物・貨物システムの初期不具合
【ポイント】
新システムは稼働直後に安定まで「揺れ」が出やすい。
【背景】
旅客・貨物のIT(スキャン/ラベリング/通知)を同時に切替。現場の習熟差やインターフェース不整合が潜む。 業務インパクト:
- 誤仕分け・到着通知遅延で納期が伸びる
- 予約どおり積めないロール率の一時上昇
- 再配達・再通関など手戻りコストの発生
【対策】
- 本番前に小口で流して、実際の時間とミスを記録 → 社内の標準時間と想定トラブルを先に決める。
- ふだんはシステム、止まったら紙/CSVに即切替。復旧後に記録を照合して確定する。
- ロール率とは:総予約のうち、次便送りになった割合。
デメリット2|アクセス/インフラが不安定
【ポイント】
導線・舗装・上屋オペが“慣らし運転”の間は搬入時間が読みづらい。
【背景】
空港連絡路やゲート運用が暫定化し、渋滞時間帯の振れが大きくなる。
【業務インパクト】
- カットオフの前倒しが必要になり、オペ余裕が減少
- ドライバー拘束時間・車両費など陸送コスト増
- 週内の積替・再手配が増えて計画の手戻り発生
【対策】
- 集荷・持込は常に+60分、遠方発はさらに+30〜60分の余裕=渋滞のブレを時間で吸収。
- 1〜2日分を置いて、欠品も滞留も防ぐ“クッション”にする。
- カットオフとは:航空会社/ターミナルが当日便に受け付ける最終持込締切時刻。過渡期は渋滞・導線調整で前倒しが必要になりやすい。
デメリット3|移行スケジュールの直前変更(再設定コスト)
【ポイント】
監督当局の最終認可や運用テスト結果で、移行日が再設定される可能性。
【背景】
全面移転は関係者が多く、安全・保安要件の追加で直前変更が起こり得る。
【業務インパクト】
- 予約・社内マスタ・帳票テンプレの更新やり直し
- 旧表記混在や周知漏れによる現場混乱
- 代替ルート/在庫計画の組み直しに伴う追加コスト
【対策】
- PNH版+KTI版を同時に用意し、切替日はスイッチ1つで移行。
- 別ハブも前もって押さえ、価格・条件を事前合意=トラブル時に即乗り換えできる。

まとめ
新空港への切替で得られる良い変化は、
① 器の拡大で便・機材・貨物スペースの選択肢が増え、納期の読みやすさが上がる。
② 定温・検査・搬出など周辺機能の整備で、品質と所要時間が安定する。
③ 運営の平準化で、繁忙期でも在庫が詰まりにくくなる。
一方の留意点は、距離の伸び/立ち上げ期の“慣らし”/道路の過渡期/運賃の一時的な振れ。
これらの不安の正体は多くが「情報の曖昧さ」にあるため、締切前倒しや小在庫配置、表記統一や試験出荷など、変更点を前提にした設計を先に敷けば、メリットは確実に取りに行けます。
これらの対策はとても「めんどくさい」です。
ですが、このめんどくさい対策をしっかりと行うことで、KTI(テチョ国際空港)は十分に利用価値があります。
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